公正証書の書き方
慰謝料の金額や養育費の問題など、細かな内容まで話し合って決めておかないと後々トラブルになってしまいかねません。問題なく離婚できるよう細かなことまで話し合い、双方合意のもとで条件を明確にしておくことが離婚後のトラブルを防ぐことになります。
トラブルを防ぐためには、離婚の条件を文書にしておくことが一番確実な方法です。口約束だけでは言った言わないで後々トラブルが起こる可能性は高くなりますし、勘違いや錯誤によって条件の認識がずれてしまうことも考えられます。第三者から見ても明確に離婚の条件がわかるような文書を作成しておけば、条件に双方が合意したことを明確に証明する証拠になります。
離婚に際して取り決めた条件をまとめた書類のことを離婚協議書といいます。離婚協議書に関しては当事者同士の合意のもとで作成してもいいのですが、より法的な効力を高いものにするためには公正証書として法的な文書にすることが望ましいです。公正証書とは法律の専門家である公証人が法律に従って作成する文書であり、離婚協議書も公正証書として作成することが可能です。公正証書として離婚協議書を作成しておけば、万一離婚後に条件面に対して不服を申し立てられたとしても離婚協議書の法的効力を持って対抗することができます。
公正証書は法律に認められた書類なので、その効力は絶大です。一般的な離婚協議書では慰謝料の未払いなどがあったとしても強制的に徴収するのは困難ですが、離婚協議書を公正証書として作成しておけばすぐに強制的な執行手続きに入ることが可能です。効力は絶大ですが、その分作成に関しては慎重に臨まなくてはいけません。
公正証書の書き方については法律によって厳密にルールが決められています。ルールに外れたものであれば公正証書として認められませんから、きちんとルール通りに書くことが大切です。
公正証書の書き方としては、まず離婚届の提出時期について書きましょう。離婚協議書に提出時期を記載しておかないと、いつまでも離婚届を提出せずに離婚逃れをされてしまう可能性があります。提出期限を記載しておけば、万一離婚届が提出されなかったときに強制的に対処することができます。
こどもがいる夫婦が離婚する場合、真剣に関しての取り決めも記載しておきましょう。親権者はどちらなのかは当然ですが、親権者と養育を担当する監護権者が別の場合はそのこともきちんと記載しておく必要があります。虐待の事実が確認されたときは親権についてもう一度話し合う、といったような特記事項も忘れずに記載してください。
こどもとの面会交流権は親であれば認められる権利です。子の福祉を第一に考え、面会頻度や面会時間などを明確に決めておきましょう。第三者の立会いが必要であればその旨を記載しておくのを忘れないでください。後で親権者がこどもを面会させたくないと訴えたとしても、公正証書があれば面会交流権を強く主張することができます。
こどもの養育費も重要な項目です。養育費はこどもの権利であり、こどもが健康に育つために必要なお金です。養育費に関して取り決めをまとめたら、きちんと離婚協議書に記載しておきましょう。養育費の金額だけでなく支払方法や支払日、いつまで支払うかの期限なども明確にしておかないとトラブルになりかねません。支払うのはこどもが18歳になるまでなのかそれとも大学卒業までなのかで金額は大きく異なりますから、きちんと年月日を明確にしておきましょう。
養育費以外の出費に関しても、取り決めを記載しておくと安心です。万一の事故時の入院費や大学の入学金など、本来養育費の範囲には含まれないお金に関しても取り決めておくと後々トラブルになりません。
慰謝料は金額、支払方法、支払期限を明確にし、遅延があった場合のペナルティもまとめておきましょう。慰謝料の踏み倒しは意外に多く、離婚協議書に記載しておかないと踏み倒される可能性があります。
財産分与は双方が合意した内容に関してわかりやすく記載し、個別の財産について所有権をはっきり書いておきましょう。離婚協議書に記載されていない財産に関しては、所有権を放棄したとみなされてしまいます。年金や退職金の分割も忘れずに盛り込んでおいてください。
その他離婚後の接触に関することや連絡先など、必要になることは全て記入しておきましょう。個人で離婚協議書を作成するのが難しければ、弁護士に相談して書き方を教わるのも有効です。
寺尾 浩(てらお ひろし)
平成4年3月 一橋大学法学部卒業
平成9年 司法試験合格(52期)
離婚交渉は当事者にとって精神的につらい作業です。
また離婚は、過去を断ち切って新たな人生の一歩を踏み出す行為ですから、いつまでも過去(離婚交渉)に時間をとられるのは両当事者にとって得策ではありません。そのため、私は離婚問題を早期に解決することを重視しています。
問題を解決する方法は一つしかありません。それは行動を起こすことです。1人で悩んでいても、同じ考えが頭の中をぐるぐるするだけで、何の解決にもなりません。思い切って専門家にご相談ください。
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