専業主婦の離婚
専業主婦の方の中には、「夫と離婚したい」と考えている場合であっても、離婚後の生活を心配してなかなか離婚に踏み切れない方もいらっしゃると思います。
専業主婦の場合、生活基盤を夫の収入に頼っていることが多いので、離婚後に生活していけるかどうかを心配されるのは無理もありません。
但し、離婚後の生活を心配されている方の中には、離婚後の再就職の見込み(離婚後の自分の収入見込み)だけで離婚後の生活をシミュレーションするなど、離婚後の生活に関する検討が不十分なケースもあります。
離婚後の収入状況を検討するのも大切ですが、専業主婦の方が離婚を検討する際には、それ以外にも以下のようなポイントを押さえておく必要があります。
離婚前に別居する場合であっても、夫が同意しない限り、別居費用を夫に請求するのは困難です。
そのため、別居して離婚協議を進める予定の場合は、別居に伴う費用の金額を検討した上で、その支払原資(親族等から援助を受けられるかどうかも含みます)を確保しておく必要があります。
また、夫に離婚を切り出してもすぐに離婚が成立するとは限りません。
そのため、離婚に至るまでに夫に請求できる婚姻費用(生活費)についても事前に検討しておく必要があります。
婚姻費用の金額は、夫の年収や同居する子どもの数・年齢によっても変わります。
婚姻費用を請求しても、夫が直ちに誠実に裁判基準の婚姻費用を支払ってくれるとは限りません。
夫がそもそも婚姻費用を支払わない場合、相手方が裁判基準の婚姻費用を支払ってくれない場合には婚姻費用分担調停を申し立てる必要があります。相手方が理不尽な主張を繰り返した場合、審判で婚姻費用が決められるまで半年以上かかることもあります。
そのため、婚姻費用が支払われなくても半年以上生活できる預貯金・現金を持って別居すべきです。
離婚する場合、財産分与として、夫婦共有財産を原則として2分の1の割合で分けることになります。
その前提として、自分名義の財産だけでなく、夫名義の財産も把握する必要がありますが、離婚協議が始まった後に夫側が正直に全ての財産を開示するとは限りません。
そのため、離婚協議を開始する前かつ別居前に、可能な限り夫側の財産資料を収集しておくことが重要です。
また、夫の年収は、養育費や婚姻費用を算定する基礎となりますので、源泉徴収票や課税証明書などで正確な金額を把握しておいた方がいいでしょう。
財産資料や収入資料の収集が完了した後、財産分与・養育費・慰謝料など、離婚に至った場合に夫に請求できる金額の見込みを検討することになります。
但し、財産分与の対象財産の範囲が争いになる場合、給与以外の収入(自営収入など)について争いになる場合、慰謝料の発生原因(不貞行為の有無など)について争いになる場合など、そもそも夫に請求できる金額の見込みを算定するのが容易ではない事案もあります。
離婚してシングルマザーとなった場合、助成金や公的な減免・割引を受けられるケースもあります。
これについては、一度自治体に相談された方がいいでしょう。
以上の点を踏まえて離婚後の生活等をシミュレーションし、離婚を決意できた場合は、離婚に向けた準備を進めていくのがいいでしょう。
離婚意思が固まれば、別居・離婚協議・離婚調停・離婚訴訟など、離婚に必要な手続きを踏み、離婚を目指すことになります。
離婚を決意した後の準備・手続きについては、専業主婦であってもそれ以外の方であっても変わりはありません。
離婚を決意した後の手続だけでなく、離婚条件の見込みを検討する際などに法律知識が必要になるケースも少なくありませんので、専業主婦の方で離婚を考えられた場合は、一度当事務所までご相談ください。
寺尾 浩(てらお ひろし)
平成4年3月 一橋大学法学部卒業
平成9年 司法試験合格(52期)
離婚交渉は当事者にとって精神的につらい作業です。
また離婚は、過去を断ち切って新たな人生の一歩を踏み出す行為ですから、いつまでも過去(離婚交渉)に時間をとられるのは両当事者にとって得策ではありません。そのため、私は離婚問題を早期に解決することを重視しています。
問題を解決する方法は一つしかありません。それは行動を起こすことです。1人で悩んでいても、同じ考えが頭の中をぐるぐるするだけで、何の解決にもなりません。思い切って専門家にご相談ください。
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