「親権は渡さない。妻が親権を取得するのであれば、婚姻費用も養育費も月額6万円しか支払わない。」と主張する夫と交渉し、親権を妻が取得した上で、婚姻費用月額12万円・養育費月額8万円を夫から妻に支払う内容で離婚調停を成立させた事例
依頼者 妻
夫 41歳 会社員 箕面市在住
妻 38歳 主婦 箕面市在住
離婚原因 性格の不一致
きっかけ 夫に有利な離婚条件で離婚に応じなければ離婚までの生活費も渡さないと夫から言われた
財産 預貯金
子ども 2人
Aさんは夫Bと別居して本人同士で離婚協議をしていましたが、夫Bが、自身に極めて有利な離婚条件を提示し、「この条件で離婚に応じなければ生活費も渡さない。」と主張してきたため、当方に依頼されました。
Aさんは弁護士に依頼するまで夫Bから毎月6万円の婚姻費用をもらっていました。しかし、Aさんと夫Bの収入状況からすれば月額12万円以上の婚姻費用が相当であると考えられました。
そのため、弁護士は夫Bに対して離婚協議を求めるとともに、離婚成立まで月額12万円以上の婚姻費用の支払を求めました。
これに対して夫Bは、弁護士に依頼し、「子どもの親権は夫Bが取得すべき。別居の原因はAさんにあるので、離婚までの婚姻費用も6万円以上は支払わない。」と主張してきました。
子どもの親権者を裁判で決める場合、子どもが幼くまだ親権者を自分で決めることができない年齢であるときは、子どもの過去・現在の主たる監護者がどちらなのか等を考慮要素として、裁判所が親権者を定めます。
Aさんの場合、子ども達は親権者を自分で決めることが出来ない年齢であり、かつ、子ども達の過去・現在の主たる監護者はAさんでした。
その他に裁判で夫Bが親権を取得できるような事実関係もありませんでした。
そのため、裁判になっても、Aさんが親権を取得する可能性が極めて高いと考えられました。
また、Aさんは早期離婚できるなら特に夫Bに対して財産分与は求めないという意向でした。
さらに、審判・裁判になれば月額12万円以上の婚姻費用・月額9万円以上の養育費が認められる可能性が高いと考えられました。
そのため、弁護士は、夫Bに対し、裁判で争っても夫Bが親権を取得できる余地はないことを説明した上で、「早期に離婚が成立するのであれば、夫Bに財産分与を求めない。その他の離婚条件も婚姻費用月額12万円・養育費月額9万円という条件で構わない。」という案を提示しました。
しかし、それでも夫Bは「親権は譲れない。親権をAさんが取得するのであれば婚姻費用も養育費も6万円以上は支払わない。」と主張してきました。
夫Bが理不尽な主張を繰り返して協議が全く進展しなかったため、弁護士は裁判所に離婚調停・婚姻費用分担調停を申し立てました。
調停になると、夫Bは親権を争う主張を撤回しました。
しかし、夫Bは「結婚前からの借金があるので、養育費と婚姻費用は6万円以上支払わない。」と主張し続けました。
弁護士は、「結婚前の借金は養育費や婚姻費用を減額させる理由にならない。婚姻費用や養育費すら払えないほど借金の返済が苦しいのであれば、自己破産等の債務整理を行うべき。」と反論して粘り強く夫Bと交渉を続け、夫Bの主張が裁判実務に照らして到底認められるべきものでないことを裁判所にも説明しました。
その結果、夫Bは「離婚までの婚姻費用を月額12万円、離婚後の養育費を月額8万円にするのであれば、離婚調停を成立させる。」と主張してきました。
審判・裁判で争えば、12万円以上の婚姻費用・9万円以上の養育費が認められる可能性が極めて高いと考えられましたが、Aさんは、早期離婚を強く希望されており、経済的なメリットよりも早期に離婚できることを優先したいという意向でした。
そのため、Aさんは、夫Bの上記提案で離婚することに納得され、最終的に「Aさんが親権を取得した上で、夫BからAさんに支払う婚姻費用を月額12万円・養育費を月額8万円とする」という内容で調停を成立させました。
寺尾 浩(てらお ひろし)
平成4年3月 一橋大学法学部卒業
平成9年 司法試験合格(52期)
離婚交渉は当事者にとって精神的につらい作業です。
また離婚は、過去を断ち切って新たな人生の一歩を踏み出す行為ですから、いつまでも過去(離婚交渉)に時間をとられるのは両当事者にとって得策ではありません。そのため、私は離婚問題を早期に解決することを重視しています。
問題を解決する方法は一つしかありません。それは行動を起こすことです。1人で悩んでいても、同じ考えが頭の中をぐるぐるするだけで、何の解決にもなりません。思い切って専門家にご相談ください。
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