受任前に依頼者が希望していた離婚条件よりも更に有利な離婚条件を夫に認めさせ、受任から約2か月で調停離婚した事例
依頼者 妻
夫 46歳 無職 大阪市在住
妻 48歳 会社員 吹田市在住
離婚原因 夫の不貞行為・長期の別居
きっかけ 夫から離婚調停を申し立てられた
財産 不動産・預貯金
子ども 2人
Aさんは、夫Bが不貞行為を行ったため、約10年前から夫Bと別居していました。
その後もAさんと夫Bは別居を継続していましたが、最近になってAさんは夫Bから離婚を求められました。
この時点でAさんも夫Bとの離婚に同意していたため、Aさんは夫Bと離婚協議を進めました。
その結果、「Aさんの自宅不動産をAさんが取得し、残っている住宅ローンもAさんが支払っていく」という離婚条件で、Aさんと夫Bは合意直前の段階まで協議を進めました。
しかし、合意直前になって突然夫Bは態度を翻し、「もっと夫Bに有利な条件での離婚を求める」と主張し、弁護士に依頼して離婚調停を申し立ててきました。
そのため、Aさんは当方に依頼されました。
財産分与の基準時は別居時ですが、Aさんと夫Bの場合、別居時点での共有財産はほとんどなく、共有財産としてはAさんの自宅不動産くらいしかありませんでした。
当該不動産は別居時点ではオーバーローンでしたが、別居後に夫Bが住宅ローンを支払い続け、別居時と比べて約1200万円ローン残高が減り、弁護士が受任した時点では残ローン額は約2200万円となっていました。
当該不動産の時価は約2600万円でしたので、離婚後の住宅ローンをAさんが負担することになったとしても、当該不動産を取得する内容で離婚した方がAさんにメリットがある状況でした。
そのため、Aさんとしては「残りの住宅ローンをAさんが支払う代わりに当該不動産をAさんが取得して住み続けたい」という意向でした。
調停において、夫Bは、Aさんとの離婚協議を自ら決裂させたにもかかわらず、「Aさんとの調停前の離婚協議では、“夫B名義の住宅ローンの引落口座に別居後にAさんが入金した約120万円は夫Bが取得する。”という約束だったので、この約束はそのまま維持したい。Aさんの自宅不動産は売却すればローンを完済しても売却益が出るのであるから、Aさんが同不動産を取得するのであれば、売却益相当額を代償金として夫Bに支払うべき。」等と主張してきました。
これに対し、弁護士は「調停前の離婚協議を合意直前に自ら決裂させておきながら、自分にとって有利な部分だけ調停前の協議内容を踏襲することを求める夫Bの主張は言語道断であり、到底認められない。夫Bは有責配偶者であるが、Aさんは夫Bに慰謝料の支払いまでは求めていないのであるから、この点で夫Bも利益を得ている。そのため、Aさんが住宅ローンの残金の他に代償金を支払うことも認められない。」と反論しました。
すると、夫Bは、Aさんが別居後に入金した約120万円が入っている住宅ローンの引落口座の通帳とキャッシュカードを再発行して暗証番号を変更し、同口座をAさんが使用できないようにしてきました。
これを受けて、弁護士は、夫Bに対し、「同口座に入金されていた約120万円はAさんが別居後に貯めたお金を入金したものなので、共有財産ではなくAさんの固有の財産である。即刻返金を求める。」と伝えて交渉し、夫Bから約120万円を返金させました。
その上で弁護士は夫Bとの交渉を続け、Aさんの希望どおり「現時点で残っている住宅ローンをAさんが支払う代わりに、Aさんの自宅不動産をAさんが取得する」という内容を夫Bに認めさせました。
また、Aさんには相応の収入があったため、弁護士に依頼される前の離婚協議では、夫Bに養育費の支払いまでは求めていませんでした。
ただ、弁護士がAさんに確認したところ、「可能であれば養育費も支払ってもらいたい」という意向だったため、弁護士は養育費についても夫Bと交渉し、養育費として毎月2万円ずつAさんに支払うことを夫Bに認めさせました。
そのため、最終的に、「①Aさんが住宅ローンの残額を支払う代わりに自宅不動産を取得し、②夫BはAさんに対して養育費を月額2万円ずつ支払う。」という内容で調停を成立させました。
受任から約2か月の早期解決でした。
寺尾 浩(てらお ひろし)
平成4年3月 一橋大学法学部卒業
平成9年 司法試験合格(52期)
離婚交渉は当事者にとって精神的につらい作業です。
また離婚は、過去を断ち切って新たな人生の一歩を踏み出す行為ですから、いつまでも過去(離婚交渉)に時間をとられるのは両当事者にとって得策ではありません。そのため、私は離婚問題を早期に解決することを重視しています。
問題を解決する方法は一つしかありません。それは行動を起こすことです。1人で悩んでいても、同じ考えが頭の中をぐるぐるするだけで、何の解決にもなりません。思い切って専門家にご相談ください。
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