借金等を理由に婚姻費用を月10万円しか支払わないと主張してきた夫を説得し、①離婚までの婚姻費用月額15万円、②離婚後の養育費月額12万円、③解決金約480万円を夫から取得する内容で調停離婚した事例
依頼者 妻
夫 55歳 会社員 松原市在住
妻 52歳 主婦 大阪市在住
離婚原因 長期の別居
きっかけ 夫が離婚を求めてきた
財産 不動産・預貯金・生命保険・退職金
子ども 2人
Aさんは、夫Bと約6年前から別居していました。
夫Bは、別居後Aさんに対して、Aさんが居住する不動産の住宅ローンとは別に婚姻費用を支払っていましたが、突然婚姻費用の支払を停止し、弁護士に依頼して離婚を求めてきました。
そのため、Aさんは今後の対応を当方に依頼されました。
Aさんは長期間別居状態が続いていたため、離婚自体はやむを得ないと考えていました。
ただ、夫Bから婚姻費用が全く支払われなくなっていたので、弁護士は受任後すぐに夫Bに対して、Aさんの居住不動産の住宅ローンとは別に婚姻費用を支払うよう請求しました。
これに対し、夫Bは、Aさんの居住不動産の住宅ローンを離婚協議中も支払うことは認めましたが、別居後に多額の借金をしたこと等を理由に、「婚姻費用としては、住宅ローンとは別に月10万円しか支払えない。」と主張してきました。
もっとも、夫Bの年収からすると、住宅ローンを夫Bが支払っていることを踏まえても、婚姻費用は月15万円程度が相当だと考えられました。
そのため、弁護士は相当額の婚姻費用の支払を求めて家庭裁判所に婚姻費用分担調停を申し立てました。
これに対し、夫Bも離婚調停を申し立ててきたため、調停の席で離婚条件の協議と婚姻費用の協議を並行して行うことになりました。
調停においても、夫Bは「婚姻費用は月額10万円」という主張は変えず、離婚条件についても「別居後に夫B名義の多額の満期保険金をAさんが取得済みのため、本来夫BがAさんに対してこれ以上の財産分与を行う義務はない。」と主張してきました。
弁護士がAさんから事情を聞いたところ、「確かに別居後の夫B名義の満期保険金を受領したが、それは子どものために使い、既に費消してしまっている。」ということでした。
ただ、Aさんは上記満期保険金の使い道について、夫Bの許可を得ておらず、夫Bに相談したわけでもなかったので、裁判で争った場合、夫Bの上記主張が認められ、夫Bからの財産分与が0円になる判決が出る可能性がありました。
また、Aさんの場合、夫Bに対して財産分与とは別に慰謝料を請求するのも難しいと考えられました。
それでも弁護士は、「夫B名義の満期保険金は、子どものために使用したのであるから、婚姻費用の一部として費消したと考えるべきであり、財産分与の中で考慮すべきではない。夫Bも従前Aさんと夫Bが居住していた不動産の売却金を別居後に取得している。」等と反論した上で、「①離婚までの婚姻費用を月額15万円、②養育費として月額12万円、③離婚に伴う解決金(財産分与を含む。)として約480万円を夫BがAさんに支払い、④離婚から3か月以内にAさんが夫B名義の自宅不動産から退去する。」という離婚条件を夫Bに提示しました。
これに対し、夫Bは上記①~④の離婚条件を受け入れるのを渋っていましたが、弁護士の交渉の結果、最終的に夫Bは「離婚時までの未払の婚姻費用と解決金を離婚後に分割で支払う内容であれば、上記①~④の離婚条件に同意する。」と回答してきました。
Aさんも夫Bが借金のために一括で解決金等を支払う能力がないことは理解していましたので、夫Bの分割払いの提案に納得されました。
そのため、上記①~④の内容で離婚調停を成立させました。
寺尾 浩(てらお ひろし)
平成4年3月 一橋大学法学部卒業
平成9年 司法試験合格(52期)
離婚交渉は当事者にとって精神的につらい作業です。
また離婚は、過去を断ち切って新たな人生の一歩を踏み出す行為ですから、いつまでも過去(離婚交渉)に時間をとられるのは両当事者にとって得策ではありません。そのため、私は離婚問題を早期に解決することを重視しています。
問題を解決する方法は一つしかありません。それは行動を起こすことです。1人で悩んでいても、同じ考えが頭の中をぐるぐるするだけで、何の解決にもなりません。思い切って専門家にご相談ください。
【アクセスマップ】