依頼者 夫
夫:23歳 会社員
妻:30歳 無職
離婚原因:妻が里帰り出産のために実家に帰りそのまま帰って来なくなった。子どもの出生も知らせず、夫に無断で名前を付けた。
子供:子ども 1人(0歳)
財産:特になし
Aさんは、妊娠中の妻とともに婚姻届を出しました。
その2日後に妻は妻の実家に出産のため里帰りしました。
ところが、そのわずか2日後、妻はAさんに「もう(Aさん宅に)戻らない。」と電話してきました。
驚いたAさんが理由を尋ねても沈黙して答えません。
その後、Aさんが電話しても妻は出ず、メールで理由を尋ねても返答しませんでした。
妻はマザコンなのか、妻の母の言う事をなんでも聞き入れる性格でした。
妻の母はAさんを意味もなく嫌い悪口を言っているようで、妻が実家に帰る度に妻がAさんを非難したりしました。
そのためAさんは、「妻の母が妻に離婚を強制している。」と確信しました。
Aさんは妻の実家に何度か行きましたが、妻の母が対応して妻に会わせてもらえませんでした。
そして妻の母はAさんに「離婚する。離婚届を持ってきて。弁護士を雇うから弁護士を通して。」などと告げました。
Aさんはなんとか妻と連絡が取りたいと当事務所に相談に来られました。
弁護士が調査すると、1カ月前に子どもは出生しており、既に名前を付けられていました。子どもの名前は、Aさんが妻と話し合っていた現代風の名前ではなく、古めかしい名前で、Aさんの従兄弟の名前が含まれており、Aさんが絶対に反対したであろう名前でした。
妻の母の言いつけどおりにAさんを拒否し、子どもが生まれたことすら知らせない妻に絶望し、Aさんは離婚を決意しました。
Aさんが離婚を要求すると、妻は養育費10万円と扶養的財産分与(妻の為に養育費の他に一定額の支払を要求すること)を請求してきました。
Aさんの収入は約240万円でしたから、養育費は3万円程度が相場です。あまりにもかけ離れた数字のため、調停でも養育費の折り合いがつかず、訴訟に移行しました。
訴訟において当方の主張立証により、裁判官は「養育費は3万円程度、扶養的財産分与は認められない。」と判断しているようでした。
しかし、別居当初の妻や妻の母の言動をAさんは録音していませんでした。
妻は、「そのような発言はしていない。離婚原因はAさんにある。離婚はしない。」と虚偽主張して争ってきました。
裁判官は、「妻や妻の母が離婚を求めた。離婚原因は妻側にあった。」という確信が持てず、当方を勝訴させることを躊躇していました。
そして裁判官は、双方に対し、「Aさんが妻に解決金100万円を支払う。養育費は3万円。」という和解案を勧告しました。
裁判官が「妻が離婚を求めた。離婚原因は妻側にあった。」と認定してくれない場合、Aさんは離婚できません。
別居期間が長いこと(3年程度)を理由に離婚を請求することもできますが、Aさんの場合まだ別居して1年半しか経過していませんでした。
また、Aさんの場合、0歳の子どもがいることから、4年程度の別居期間がないと離婚できない可能性もありました。
Aさんは悩まれましたが、「100万円を支払ってでも今すぐ確実に離婚したい。」と決意され、裁判官和解案を受け入れることにしました。 妻も、裁判官から、「有責配偶者ではないAさんに100万円を超える解決金を支払わせるわけにはいかない。養育費は3万円が限度である。」と説得され、相場を大幅に超える養育費請求・扶養的財産分与請求を断念し、裁判官和解案を受け入れました。
その結果、Aさんは和解により離婚することができました。
寺尾 浩(てらお ひろし)
平成4年3月 一橋大学法学部卒業
平成9年 司法試験合格(52期)
離婚交渉は当事者にとって精神的につらい作業です。
また離婚は、過去を断ち切って新たな人生の一歩を踏み出す行為ですから、いつまでも過去(離婚交渉)に時間をとられるのは両当事者にとって得策ではありません。そのため、私は離婚問題を早期に解決することを重視しています。
問題を解決する方法は一つしかありません。それは行動を起こすことです。1人で悩んでいても、同じ考えが頭の中をぐるぐるするだけで、何の解決にもなりません。思い切って専門家にご相談ください。
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