離婚問題における「単身赴任」と「別居」の違い
相手方が離婚を拒否している場合、協議や調停を行っても離婚の合意ができなければ、離婚を求める側が離婚訴訟を提起する必要があります。
離婚訴訟で離婚を認める判決を獲得するためには、離婚原因を立証する必要がありますが、離婚原因を立証する証拠が乏しい当事者は少なくありません。
そのような事案では、裁判所は、婚姻関係破綻の直接の原因(不貞行為・DV・モラハラ・著しい性格の不一致等)に加えて別居期間を重要視しますので、離婚原因を直接立証する証拠が少ないケースであっても、「長期間の別居」を理由に婚姻関係の破綻が認められることがあります。
但し、ここでいう「別居」は、あくまで婚姻関係破綻の原因となり得る別居のことを指しますので、原則として、離婚を前提とする別居や婚姻関係が悪化したことを理由とする別居である必要があります。
単身赴任のように、離婚や婚姻関係悪化を理由とする別居とはいえないものについては、形式的には別居していたことになりますが、離婚原因の審理で考慮される「別居」には該当しません。
単身赴任中であっても夫婦関係が悪化するケースはありますので、単身赴任中に離婚協議を行う夫婦もいます。
そのため、単身赴任中であっても、離婚を前提とする別居となった時点以降は、婚姻関係破綻の原因となり得る「別居」に該当します。
但し、単身赴任中の方が「別居」を開始しようとする場合、離婚協議開始後の状態が「別居」と認められるかという観点から慎重に対応しておかなければなりません。
なぜなら、単身赴任中に「別居」となった場合でも、単身赴任開始時点と比べて客観的な変化が生じるわけではないため、離婚を拒否する側が「単身赴任なので別居ではない」などと主張してくることが想定できるからです。
そのような事態に備えて、将来「別居」の開始を立証できるようにしておくため、離婚を求める側は、「正式に離婚を求めていること」や「単身赴任が終了しても再び同居する可能性がないこと」等を文書やメール等(証拠が残る方法)で明確に相手に伝えておくべきです。
弁護士に依頼すれば、内容証明郵便という証拠の残る方法で相手に離婚を求めることになりますので、「別居」が開始した証拠も残すことができます。
単身赴任中に離婚を考えられた場合は、一度当事務所までご相談ください。
寺尾 浩(てらお ひろし)
平成4年3月 一橋大学法学部卒業
平成9年 司法試験合格(52期)
離婚交渉は当事者にとって精神的につらい作業です。
また離婚は、過去を断ち切って新たな人生の一歩を踏み出す行為ですから、いつまでも過去(離婚交渉)に時間をとられるのは両当事者にとって得策ではありません。そのため、私は離婚問題を早期に解決することを重視しています。
問題を解決する方法は一つしかありません。それは行動を起こすことです。1人で悩んでいても、同じ考えが頭の中をぐるぐるするだけで、何の解決にもなりません。思い切って専門家にご相談ください。
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