公務員・大学職員の妻のための離婚問題
目次
夫が公務員・大学職員で妻が主婦の場合、妻が就職して離婚前と同程度の生活費を確保することは困難です。
そのため、公務員・大学職員の離婚においては、妻は財産分与で十分な資金を確保することが重要になります。
夫が公務員・大学職員で妻が主婦の場合、財産分与の対象となる夫の財産を全て調査して、夫の財産を正確に把握することが必要となります。
マザコン夫やエネ夫は資産を相手方に渡すまいと財産を隠しますから、離婚を切り出す前に財産調査を終わらせておく必要があります。
何が財産分与の対象になり、それを立証する証拠をどうやって収集するかについては高度な専門的知識・経験が必要です。
したがって、離婚問題を専門とし、財産分与問題について多数の相談・事件を取り扱っている弁護士に相談する必要があります。
① 不動産(自宅・収益物件)
② 預貯金
③ 保険(生命保険・学資保険等で貯蓄型のもの)
④ 動産(車・家財道具等)
⑤ 有価証券(株式・会員権等)
⑥ 退職金(将来受け取るものも含む)
⑦ 企業年金
このうち④動産⑤有価証券⑦企業年金については、医師・会社経営者・熟年者に特有な問題として解説し、
ここでは①不動産②預貯金③保険⑥退職金について解説します。
公務員・大学職員の方には、長期住宅ローンを組んで不動産を購入されている方が多いです。この不動産の価値は(不動産時価-ローン残高)で計算されます。したがって、不動産の時価を査定してくれる不動産業者と提携している弁護士に相談すべきです。
また、頭金を誰がいくら払ったのか、支払った頭金は結婚前の預貯金から支払ったのか、結婚後の預貯金から支払ったのかによって、夫婦共有財産となって財産分与の対象となる不動産価値がいくらになるのかが変わります。
したがって、不動産の財産分与について精通した弁護士に相談しないと評価を誤るおそれがあります。
また、不動産を巡る問題を解決する方法には、売却して代金を分割する方法、一方が不動産に居住して買い取ったり、賃借りする方法など、様々な方法があります。これについては財産分与の対象となる不動産価値を踏まえ、夫婦の希望を聞きつつ解決しなければなりません。多くの離婚事件を手がけた専門家でなければ柔軟な解決はできません。
公務員・大学職員夫婦の場合、一方が預貯金の全てを把握していて、他方は全く知らない場合があります。裁判では財産分与を請求する側が相手方の預貯金を立証しない限り、預貯金は存在しないことになってしまいます。別居後に相手方の預貯金を調査することは困難ですから、別居する前・離婚を切り出す前に調査を尽くしておかなければなりません。銀行名・支店名さえ調査しておけば、弁護士であれば残高を調査できます。
また、公務員・大学職員の場合、給与から財形貯蓄として定額が引かれていることがあります。これについても調査して財産分与の対象に入れるべきです。
〇保険
掛け捨ての生命保険には財産的価値はありませんが、積立式の生命保険については財産的価値があります。
また、公務員・大学職員は子どものために学資保険に入っていることが多く、これについても財産的価値があります。
これらを調査して財産分与の対象としなければなりません。
既に支払われた退職金は、当然、財産分与の対象となり、争いになることはほとんどありません。
まだ支払われていない退職金の場合どうなるかについて、離婚を専門としない弁護士の中にはご存知ない方が多いです。
現在では、大阪家庭裁判所でも東京家庭裁判所でも、「まだ支払われていない退職金も財産分与の対象とする。」という運用がなされています。
かつて裁判所は、「退職まで7年以内であれば、財産分与の対象とする(公務員・大学職員の場合、民間の会社と違って勤務先が破産することは考えらないので、退職まで13年内であっても財産分与の対象とできる)」という運用をしていました。そのため60歳定年の場合、47歳を超えるかどうかが一つの基準となっていました。法律専門書にも同様なことが書かれています。そのため弁護士の中にも、かつての裁判所の運用を説明する人がいるのです。
退職金は労働の後払的性格のものですから、現在では、いかに若くとも退職金は財産分与の対象とされます。具体的には、別居時に自己都合退職した場合の退職金を算出し、それを財産分与対象財産とするのです。この裁判所の運用に即した戦略が必要になってきます。
退職金については最新の裁判所の動向に即した戦略が必要となります。離婚問題について研鑽を積んでいる経験豊富な弁護士にご相談されることをおすすめいたします。
公務員・大学職員の場合、夫婦共有財産を財産分与するときには、夫婦それぞれが2分の1ずつ取得します。たとえ妻が主婦で収入がなかったとしても、妻が育児・家事をしたことは、夫と同じ収入の労働をしたと評価されるのです。
夫が共済組合に加入している場合、主婦だった妻は夫の年金の分割を請求できます。分割してもらえるのは、夫が婚姻期間中に納めた掛金部分です。したがって婚姻期間の長い公務員・大学職員の場合、分割してもらえる年金は多くなりますが、若年者の場合、分割してもらえる年金は少額になります。
家庭裁判所では、夫婦双方の年収から算出される算定表というものを作成しており、多くの場合は、これに基づいて算定されます。
マザコン夫・エネ夫などは、婚姻費用・養育費を少しでも少なくしようと年収を明らかにしないことがあります。
そのため、離婚を切り出す前にこれを調査しておく必要があります。
算定表は公立学校の学費を基にして作成されています。したがって、子どもを私立学校に通わせている場合は、算定表で算出される金額に上乗せして、私立学校学費分を別途婚姻費用・養育費として請求できる場合があります。
離婚を専門にやっていない弁護士にはこれを知らない弁護士が多く、そのような弁護士が相手方に就くと解決が遅れます。夫が私立学校進学を承諾していたかどうか、夫の収入はどの程度かによって請求できるかどうかが変わりますし、請求できる場合でも、私立学校学費の何割を請求できるかは、事案によって異なります。
離婚について専門知識のない弁護士に相談されると誤った解決がなされる可能性がありますので注意が必要です。
夫が公務員・大学職員の場合、調停・裁判で決まった婚姻費用・養育費・財産分与を相手方が支払って来なかった場合でも、強制的に回収する手段があります。
夫の給与に対して強制執行(給与の差押)するのです。
強制執行(給与の差押)をしますと、夫の勤務先は夫に給与・賞与全額を支払うことができなくなり、給与・賞与の一部を妻に支払わなければならなくなります。退職して免れようとしても、その退職金からも回収できます。公務員・大学職員の夫から強制執行により回収した経験の豊富な弁護士に相談すべきです。
寺尾 浩(てらお ひろし)
平成4年3月 一橋大学法学部卒業
平成9年 司法試験合格(52期)
離婚交渉は当事者にとって精神的につらい作業です。
また離婚は、過去を断ち切って新たな人生の一歩を踏み出す行為ですから、いつまでも過去(離婚交渉)に時間をとられるのは両当事者にとって得策ではありません。そのため、私は離婚問題を早期に解決することを重視しています。
問題を解決する方法は一つしかありません。それは行動を起こすことです。1人で悩んでいても、同じ考えが頭の中をぐるぐるするだけで、何の解決にもなりません。思い切って専門家にご相談ください。
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