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医師の場合、一般の方と違って大きな資産を形成されている方が多いです。
そのため、財産分与の対象となる財産を全て調査して、財産を正確に把握することが必要となります。
医師は、多大な資産を相手方に渡すまいとし財産を隠す傾向がありますから、離婚を切り出す前に財産調査を終わらせておく必要があります。
何が財産分与の対象になり、それを立証する証拠をどうやって収集するかについては高度な専門的知識・経験が必要です。
したがって、離婚問題を専門とし、財産分与問題について多数の相談・事件を取り扱っている弁護士に相談する必要があります。
① 不動産(自宅・収益物件)
② 預貯金
③ 保険(生命保険・学資保険等で貯蓄型のもの)
④ 動産(車・家財道具等)
⑤ 有価証券(株式・会員権等)
⑥ 退職金(将来受け取るものも含む)
このうち①不動産②預貯金③保険については、サラリーマン・公務員・大学職員に特有な問題として解説し、
ここでは④動産⑤有価証券⑥退職金について解説します。
家財道具は一般に時価評価額が極めて低いので、財産的価値を検討して財産分与することはほとんどありません。テレビ・レコーダー・パソコンなどをどちらが引き取るかが問題になる程度です。
しかし医師の場合、夫婦の一方が宝石等の貴金属、高級な時計・自動車、小型船舶などを所持していることがあります。これらは全て夫婦共有財産になり得ますから、これらを調査・時価評価して財産分与しなければなりません。
医師の場合、余った資産で株式投資を行っていることがあります。
このような場合には、その株式を調査・特定して評価し、財産分与の対象とする必要があります。
また、医師が医療法人を経営している場合は、医師は医療法人に出資しています。この出資金は財産分与の対象となります。医師が一人で全額の出資をしている場合には、医師が医療法人の全資産の所有者となりますから、出資=「医療法人の全資産」となり、設立当時の出資額とは比較にならない資産価値を有することになります。
ただ、この出資金の時価評価については高度な専門知識が必要です。
全出資金の何割を出資したのかによってその評価額が全く違ってきます。株式売買価格決定申立などの事件を取扱ったことがあり、株式や出資の評価に精通した弁護士に相談しないと、その資産価値を見誤ることになりますので、注意が必要です。
医師が勤務医の場合は、勤務先に退職金規定があれば、別居時に退職するとしたら支給されたであろう退職金を財産分与対象財産にできます。
実際に退職するのが何年か先であっても財産分与対象とできますので注意が必要です。
まだ支払われていない退職金の場合どうなるかについて、離婚を専門としない弁護士の中にはご存知ない方が多いです。
現在では、大阪家庭裁判所でも東京家庭裁判所でも、「まだ支払われていない退職金も財産分与の対象とする。」という運用がなされています。
かつて裁判所は、「退職まで7年以内であれば、財産分与の対象とする」という運用をしていました。そのため60歳定年の場合、53歳を超えるかどうかが一つの基準となっていました。法律専門書にも同様なことが書かれています。そのため弁護士の中にも、かつての裁判所の運用を説明する人がいます。
しかし、退職金は労働の後払的性格のものですから、現在では、いかに若くとも退職金は財産分与の対象とされます。具体的には、別居時に自己都合退職した場合の退職金を算出し、それを財産分与対象財産とするのです。この裁判所の運用に即した戦略が必要になってきます。
退職金については最新の裁判所の動向に即した戦略が必要となります。離婚問題について研鑽を積んでいる経験豊富な弁護士にご相談されることをおすすめいたします。
また、医師が医療法人の理事長であっても、退職金を財産分与の対象とすることができる場合があります。理事長が退職するときに高額な退職金を支給するため、医療法人が契約者となって保険をかけていることがあるのです。
医療法人の理事長だからといって退職金をあきらめてはいけません。
一般の会社員の場合、夫婦共有財産を財産分与するときには、夫婦それぞれが2分の1づつ取得します。たとえ妻が主婦で収入がなかったとしても、妻が育児・家事をしたことは、夫と同じ収入の労働をしたと評価されるのです。
しかし医師の場合は、それと異なる割合で財産分与が行われることがあります。
医師が病院を経営し、自らの特別な才能・手腕・専門知識により、多額の資産を形成した場合です。この場合、妻の家事労働による貢献によって形成された資産よりも、医師の才能・手腕・専門知識によって形成された資産の方が多いと考えられるのです。
このような場合、裁判例においても医師7:相手方3、あるいは医師6:相手方4といった割合で財産分与が行われたものがあります。
いなかる場合に5:5になり、いかなる場合に7:3になるのかは個別具体的な事案を分析しなければなりませんので、離婚を専門的に行っている弁護士に相談すべきです。
婚姻費用・養育費の算定は、夫婦双方の収入に応じて行われます。
家庭裁判所では、夫婦双方の年収から算出される算定表というものを作成しており、多くの場合は、これに基づいて算定されます。
ところが、この算定表は一般的な世帯を対象としているため、年収2000万円以上については記載がありません。
年収2000万円以上の医師の場合は、個別具体的な事案を加味して複雑な計算式によって算出されます。したがって、妥当な婚姻費用・養育費を算定するには、離婚問題についての高度な専門知識が必要となります。
医師は多くの資産を形成していることから、他に収入があることがあります。
例えば、不動産を賃貸した場合の収入・株式の配当・他の医院でのアルバイト収入などです。婚姻費用・養育費の算定はこれらも調査して加えたうえで行わなければなりません。
医師は子どもを私立学校に通わせていることが多いです。
ところが、算定表は公立学校の学費を基にして作成されています。したがって、子どもを私立学校に通わせている場合は、算定表で算出される金額に上乗せして、私立学校学費分を別途婚姻費用・養育費として請求できる場合があります。
離婚を専門にやっていない弁護士にはこれを知らない弁護士が多く、そのような弁護士が相手方に就くと解決が遅れます。医師が私立学校進学を承諾していたかどうか、医師の収入はどの程度かによって請求できるかどうかが変わりますし、請求できる場合でも、私立学校学費の何割を請求できるかは、事案によって異なります。
離婚について専門知識のない弁護士に相談されると誤った解決がなされる可能性がありますので注意が必要です。
寺尾 浩(てらお ひろし)
平成4年3月 一橋大学法学部卒業
平成9年 司法試験合格(52期)
離婚交渉は当事者にとって精神的につらい作業です。
また離婚は、過去を断ち切って新たな人生の一歩を踏み出す行為ですから、いつまでも過去(離婚交渉)に時間をとられるのは両当事者にとって得策ではありません。そのため、私は離婚問題を早期に解決することを重視しています。
問題を解決する方法は一つしかありません。それは行動を起こすことです。1人で悩んでいても、同じ考えが頭の中をぐるぐるするだけで、何の解決にもなりません。思い切って専門家にご相談ください。
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