養育費が受給できない場合
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離婚時にこどもがいた場合、こどもの養育に必要な養育費を、
こどもを引き取らなかった側が養育を担当する側に支払う義務があります。
養育費に関しては離婚時に金額や支払期間について取り決めを行うのが普通ですが、
残念なことに日本では養育費の支払いを逃れたり踏み倒したりするケースが後を絶たず、
取り決め通りに養育費を受け取っているのは全体の3割程度しかいないといわれています。
誤解されることも多いのですが、養育費に関しては離婚した当事者の権利ではなく養育されるこどもの権利です。
嫌いな相手にお金を渡したくないからといって支払逃れをするのは筋違いですし、親としての責任を放棄していることになります。
しかし、養育費の未払いに関しては明確な罰則が無く、支払いを逃れたからといって罪に問われることはありません。
未払いに関しては自分自身で対抗して支払い請求する必要があります。
自分で直接連絡してもいいですし、相手と直接接触するのに抵抗がある場合は第三者に連絡を取ってもらっても構いません。
離婚のときに弁護士を立てていたのなら、費用は掛かってしまいますが弁護士を通じて相手に養育費の請求をしてもらう事もできます。
相手に養育費の支払いを請求する場合は、期限と請求金額を明確しておく必要があります。
○○日までに○○円の養育費を支払ってほしい、というように請求しないと請求の効力が弱まってしまいます。
電話で請求することも可能ですが、客観的な証拠を残す意味では文書で請求したほうがより確実です。
内容証明郵便は手紙の内容を郵便局が証明してくれる郵便なので、たとえ送付した文書が処分されてしまったとしても手紙の内容を証明することが可能です。
内容証明で養育費を請求しておけば後日法的な争いになった時にも確実な証拠になりますから、何度も請求しても相手の反応が無いようなときの最終手段として有効な方法です。
内容証明はかなり強力な請求方法なので、こちらの覚悟と本気度をアピールするという意味でも有効な連絡手段です。
内容証明を弁護士に送付してもらうことも可能です。弁護士の名前で送付された内容証明郵便はかなりのプレッシャーになりますから、それだけで支払いに応じてもらえる可能性もあります。
履行勧告とは、調停や審判で決められたことが守られていないときに申し立てを行うことで、
家庭裁判所から相手方に対して決められた内容をきちんと守るように勧告してくれる制度です。
履行勧告が使えるのは裁判や調停で離婚した場合で養育費に関する取り決めが盛り込まれた調停調書や勝訴判決がある場合に限られますが、裁判所という公的機関からの勧告なので影響力は甚大です。
何よりも心理的なプレッシャーは相当なものですから、養育費を払い渋る相手に対して支払いを促す非常に効果的です。
履行命令は一定の期限までに定められた義務の履行を命じるもので、合理的な理由が無く履行命令に従わない場合は10万円以下の過料が課せられます。履行命令にも強制力はありませんが、履行勧告よりも手続きとしては強力です。
履行命令や履行手続きを経ても養育費が支払われない場合、裁判所に強制執行の申し立てを行い相手の財産の一部を差し押さえて養育費を回収することになります。
養育費回収のための強制執行では給料を差し押さえるのが一般的です。
差し押さえは法的拘束力がありますから、相手の意向に関わらず強制的に養育費を回収することが可能です。
強制執行は非常に強制力が強く、実際に差し押さえに至るまでに多くの手続きや書類提出が必要になります。
養育費回収に最も確実な方法ですが、最後の手段としてみだりに乱用するべきものではありません。
また、現在の法律では将来の養育費に対しても差し押さえの対象にすることができます。
未払いの事実が一度でもあれば将来支払う予定の養育費まで差し押さえられますから、
現在養育費の未払いがあり将来的な滞納が予想できる場合はまとめて養育費を差し押さえてこどもの養育に必要なお金を確保することが可能です。
寺尾 浩(てらお ひろし)
平成4年3月 一橋大学法学部卒業
平成9年 司法試験合格(52期)
離婚交渉は当事者にとって精神的につらい作業です。
また離婚は、過去を断ち切って新たな人生の一歩を踏み出す行為ですから、いつまでも過去(離婚交渉)に時間をとられるのは両当事者にとって得策ではありません。そのため、私は離婚問題を早期に解決することを重視しています。
問題を解決する方法は一つしかありません。それは行動を起こすことです。1人で悩んでいても、同じ考えが頭の中をぐるぐるするだけで、何の解決にもなりません。思い切って専門家にご相談ください。
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